5年間のイタリアでの建築デザイン修行から東京に戻り、知己のアートギャラリーを通じて依頼を受けた仕事は、パチスロのデザインコンサルタントでした。
自分はパチスロをした経験も無ければ、ホールに足を踏み入れたこともありませんでしたが、エール社は畑の違うお互いの経験や感性の交流こそが、今までに無い面白い発想につながっていくことを知っていました。
そして彼らには、そのことを競合他社に対する差別化と突破力と位置づけ、積極的にプロジェクトに反映させていく革新性と柔軟性、それを裏付ける技術力と組織力がありました。
筐体完成までのプロセスで私が大切にしたのは、プロダクトしてのトータルなデザイン、ユーザー本位のインターフェイスです。ホール空間自体を演出していけるような、筐体の持つテーマごとのデザインとカラーリング、遊戯者との一体感を重視したリール、モニター等各演出の配置、ディテール、質感を心がけました。
とりわけ業界でも珍しいという、エール社開発の可動式フィギュアによるインパクトは抜群で、デザインのキーとなりました。
そしてこうした考えを、プロジェクトに関わるスタッフ全員が共通して持つことにより、様々な判断をする際の指針となって作業の効率も上がり、一丸となって大きな目標に向かえると思いました。
メーカーの、デザインと技術にかける想いが凝縮された製品のひとつひとつは、まさに「作品」なんだと思いました。
世の中にふたりと同じ人がいないように、人の暮らしやニーズも千差万別です。
つまり建築家は、プロジェクトごとに芸術、工学、法規、経済等様々な要素の中から、ひとつの答えを探し出さなければならない宿命にあります。
今回のお題は、ジャパニーズ・エンターテイメントの代表格、パチスロ。
初めて相手にするテーマに対し、私のやりかたはいつものとおり「対話」でした。
人やモノを相手にそれをくりかえすことにより、求められているもの、可能性が見えてくる。
そんな、スリリングな瞬間が好きで私は仕事をしているのかもしれません。
これからもジャンルにとらわれずに、建築家の眼差しをもって様々なプロジェクトにあたりたいと思います。


